既にクーラー病にやられつつある森本です。
皆様如何お過ごしですか?
元からエアコンに弱いのが、年々輪をかけて弱くなってます。
しかも仕事柄、室内18度。
気温差15度くらい。連日これだと体がダルいです。大汗かいていた方が体は楽です。
とりあえず夏祭りまではダウンしないように気を付けなくちゃ。
ついに一護誕生日ですね。
そろそろ祝い酒(雨後の月)もあけようかな。
先日「絵日記の絵はまともなのを描く!」って書いたのに、結局描きませんでした。アハッ★(←オイ)
でも思い立ってものすごく久々にSSを書きました。しかも地元のタリーズで。
一応トップ絵とリンクしてます。
ついでに今回のイメージはM/O/N/G/O/L/8/0/0のHAPPY BIRTHDAYです。
かなりやっちまった感溢れてます。

「誕生日?」
「そう」
一護は浦原に頼み込み、彼の卍解修行で活用された特殊霊具を借りて斬月を実体化させていた。
家族は皆、今夜行われる一護のバースデイパーティの買い出しの為に外出し、その主役である一護は留守番を言い渡されチャンスとばかりに浦原商店へと走った。
そして一護の目の前には、一体何が起こっているのか分からないといった表情の実体化した斬月が呆然と突っ立っている。
「オレが誕生日って事は、オッサンの誕生日でもあるワケだろ?だからさ・・・・」
斬魄刀に誕生日という概念はないが、死神が生まれたと同時に斬魄刀にも生命が宿る。そう考えるならばその持ち主の誕生日がまた斬魄刀の誕生日というのが、斬月の主である一護の言い分である。
現にその手には浦原商店の帰り道に買ったアイスケーキと、プレゼントのつもりだろうか、申し訳程度にちょこんとリボンを付けたスイカがぶら下がっている。
そこまでされれば流石に一護が何をしたいのかが厭でも解る。どうやら自分の誕生日会をやってくれるらしい。
斬月は今までの驚きの表情を崩し、柔らかい暖かな表情になった。
斬魄刀である己の存在はその持ち主しか知らない。しかもその持ち主が死神としての力、斬魄刀の存在に気が付かなければ具象化してその意志を主に伝える事が出来ないばかりか、その存在自体も危ぶまれる儚い存在である。
そんな儚い存在を認め、更に誕生した事を祝ってくれる。これ以上の喜びは他にあるだろうか。
「ありがとう。一護」
斬月は今まで味わったことのない幸福感にを噛みしめ、一護に感謝の意を込めてその手を一護の頬に当てた。
「ばっ!何言ってるんだよ!」
「ホラ!溶けちまう前に食おうぜ!」
感謝の言葉なんて今まで一度も聞いた事のないその口から発せられた言葉に、一護は驚き顔を真っ赤にさせた。
そして照れ隠しなのか、皿にのったアイスケーキを斬月の胸に押し付けた。
「ところでこれは何だ?一護」
どうやら斬月はアイスケーキという物の存在を知らなかったらしい。
一護はあれだけ自分を導き、何でも知っていると思った斬月がケーキという誰でも知っているような物を知らない事をちょっとカワイイと思いながら、丁寧にケーキの食べ方を教えてあげた。
「ホラ!オッサン溶けてるって!」
一応一護にアイスケーキの食べ方は教わったが、知識として知っているのと実際に行動するのとは様子が違う。斬月のスプーンを扱う動作はどこかしらぎこちなく、皿に取り分けられたケーキはその口に入るスピードよりもその場で溶けていくスピードの方が速い。
斬月の皿に取り分けた分以外のケーキを早々に平らげた一護は、斬月の少々ぎこちなくケーキを食べる様子をハラハラしながら見守っていたが、ついには見ていられないといった様子で手を出した。
「あ~あ。口の周りにまで付いてるし!まったくどこの子供だよ。オッサン。」
そう言うと斬月の口についたアイスを親指で拭い、一護は何の戸惑いもなくその指を自分の口へ持行き、その動作に斬月はまたもや呆然とさせられた。
「他の者に同じ事をするのか?一護。」
瞬間何の事を言われているのか解らなかった一護だが、やっと自分が行った行為に思い当たって慌てて弁解した。
「ホ、ホラ。小さい頃妹達の面倒見てたからさ。その時のクセでつい!普段はそんな事しないからな。」
家族だけに見せる行為。それを斬月の前でも見せてしまう。
それだけ一護は自分に気を許しているという事なのか。
戦いの場ならば決して許されないことだが、今この平穏を絵に描いた状態の場面ではその行為も微笑ましく感じ、家族同然に扱ってもらった事に喜びすら感じる。
己の存在を認め、名前を与え、共に在る事を許し、沢山のものを己に与えてくれたうえに、こうしてささやかながらも誕生会を披いてくれた。しかし己はこの主に何を与えられたのだろうか。主の望むものを今までに与えらたのだろうか。
「オッサン、気ィ悪くした?」
いつしかスプーンを口に運ぶという行為を止め、考え込んでいた斬月を不振に思った一護が不安げな目で覗き込んでいた。
「・・・私もお前になにか贈るべきなのか?」
誕生日にはプレゼントを渡す。先ほど一護が教えてくれた。
「そうは言っても今の私には何も贈れる物はないのだが・・」
今度は一護がキョトンとする番だった。
一護にとって斬月と迎えられるだけで嬉しく、それ以上は何も考えてなかった。
「え!そんなの気にすんなよ!コレはオレが勝手にしたかっただけなんだから!」
一護は自分の勝手でした事なんだからと言って斬月の申し出を断ったが、その瞬間斬月は一気にシュンとなり一護は慌てた。
「じゃぁ、その体貸してくれよ!」
「はぁ?」
絶対コイツ勘違いしていると思った一護は言葉を続けた。
「さっきオッサンに触られた時、ヒヤっとして気持ち良かったからさ。このクソ暑い中だと気持ちいいんだ。」
そう言うと一護はさっさと斬月の膝の中に納まった。
「やっぱり想像した通り、冷たくて気持ちいいや。この霊具って体温ないんだな。」
斬月の膝の中にすっぽり納まった一護は暫くその状態ではしゃいでいたが、その体温といえない体温があまりに気持ちが良かったのか大人しくなったと思ったら、いつの間にか寝息を立てていた。
他愛のない会話や些細な祝い事。その隅々にこの主の優しさが伝わってくる。
穏やかな寝息が聞こえ、布を通して主の体温を感じる。
己の頬を優しく擽る柔らかなオレンジ色の髪の毛を掻き揚げてやると、擽ったそうに身を捩る。
これが「幸せ」というものなのだろう。
空は何処までも蒼く、真夏の日差しは真っ直ぐに照らしてくる。
主の世界にも真っ青な空が広がっている事だろう。
この「幸せ」な日々がこの主の世界にずっと続いてくれればいいと、斬月は心から願った。
*end*
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